SIG-FIN-017-04

2016-10-05 (水) 08:23:20 (236d) | Topic path: Top / SIG-FIN-017-04

第17回研究会

株価情報を活用した、企業間ネットワークの構築方法について

著者

金子拓也(国際基督教大学), 久門正人(フィンテック・ラボ)

概要

本発表では、企業間のネットワークを構築する新しい方法を紹介する。企業間のネットワークはすでに、信用リスク管理の高度化を目的として金融機関に提供するサービスが開始されているほか、企業が他企業から受ける倒産リスクの増加量を示す追加的倒産リスクの研究にも活用されている。

企業間のネットワークの構築は主に、定期的に企業が公表する決算情報から、取引関係をつなぎ合わせることで作られている。このように財務データに基づくネットワークを、ファクトデータ・ベースト・ネットワーク(FbN: Fact based Network)と呼ぶことにする。実際にFbNを構築するには、①すべての市中銀行の協力のもと、同一決算期の全企業の決算書データを漏れなく入手する必要がある、②入手したデータから取引関係を抽出して、企業同士を矛盾なく結合する必要がある、③企業間商取引の増減、新規取引の発生や既存取引の消滅といった動的なネットワークを表現できない、などの問題点がある。

こういった諸問題の解決方法として本発表で紹介する手法では、企業の株価情報を活用することで、ネットワーク構築の作業負荷を低減しつつ、動的なネットワークの構築を実現する。これは株価情報を、為替や金利、商品価格などといった市場環境と、個別企業の財務状況とその変化、商取引上の企業同士のつながりとその変化を、投資家が適時適切に織り込んだ結果であると前提を置いたことで可能となっている。本手法のように、株価情報を活用して作られるネットワークのことを、FbNと区別して、ストックプライス・ベースト・ネットワーク(SbN: Stock price based Network)と呼ぶことにする。SbNとFbNは類似した形状のネットワークとなることが予想されるが、SbNは、単に企業間の商取引上のつながりを表現することを目的としたものではなく、企業間の倒産リスクの伝播の可能性の大きさに着目したネットワークとなっている。つまりSbNは、連続的な企業間取引の抽出を目指したものとはなっていない。

具体的に本発表で紹介する手法では、マートン・モデルを利用し、個別企業のPDや条件つきPD(他企業が倒産したという条件のもとでのPD)を計算し、連鎖倒産可能性が最も高いことを意味する 条件付PDが最大のものとのつながりを図示する。実際の株価データを用いて構築したネットワークからは、日々の個別PDの変動はもちろんのこと、企業のクラスター、多くの企業に影響を与えうるハブ企業や、クラスターに含まれないアウトライヤー企業が図で示され、信用リスク管理や株式運用に利用される高い可能性を伺わせる結果が得られている。

キーワード

企業間ネットワーク,マートン・モデル,デフォルト確率

論文

fileSIG-FIN-017-04.pdf

添付ファイル: fileSIG-FIN-017-04.pdf 330件 [詳細]
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